大工の見習い  No.4

大工の見習い No.4

2022.04.12
トヨちゃんの回想録

弟子入りをして1年と2ヶ月くらい経ったある日、

父親から一通の手紙が届いた。

なんだろう?と思い、中身を読んでみると

近所の人から「タバコの乾燥場を建ててもらえないか。」と言われたそう。

私は怖い気持ちもあったが、是非やってみたいと思った。

早速、親方に相談すると、

「馬鹿!何でお前が出来るもんか!!」と叱られた。

「でも、一人でやってみたいです!!」と食下がった。

「そうか、では墨だけ付けに行ってやろう。」

「いや、墨も自分で付けます。」

「勝手にしろ!!人様の大事な木を駄目にしたらどうするんなら!!」

それでも私は聞き入れなかった。

すると親方も半ばあきれたように、

「土台、胴差、それぞれ基準点があるからな。それを忘れるな。」

帰って木材を見ると丸太ばかり角になった物は屋根、タルキと屋根板ぐらい。

しかし、もう後には戻れない。

心配で夜も寝れない…。

そして棟上の日。

町内から13人手伝いがあり、その中の一人が、

「トヨちゃん!カナヅチとカケヤだけで建てたら酒一升買うてやろう!」

と言ってきた。

             つづく

トヨちゃんの回想録『大工の見習い』

有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。