大工の見習い  No.15

大工の見習い No.15

2022.10.12
トヨちゃんの回想録

看護婦さんが出てきた。

目が合うと、「あっ!」 その人は僕と一緒にお花の稽古に行っている人だった。

僕の傷口を見るなり、

「ぼっこう切っとるがん!!痛かろう!チョット待って、先生先生!!」

お医者さんが診察室に出てきた。

「先生けが人なんです。」

先生は僕の怪我を見るなり、

「これはいかんなぁ…。これはこぶの所だから、余計に大きく見えるんだ!!」

と言いながら釣り針のような針と糸を持ってきて、麻酔もせずイキナリ針をさした。

痛い!!と言ったが、手当をしてもらわないと困るし……

3箇所を縫ってくれた。

看護婦さんが包帯を巻いてくれた。

先生は何処かに去って行った。

看護婦さんは先生がいないことを確認して

「痛かったでしょう。あの先生は人を人間だと思っていないんだから。

あの先生は本当は獣医なんよ!こんな田舎の診療所にはだれも来てくれないからね。」

そう言いながら玄関まで手を引いて送ってくれた。

                             つづく

トヨちゃんの回想録『大工の見習い』

有本建設 創設者である有本豊敏が丁稚時代を語る。